ビジネスファッションの多様化が進む一方で、流行に左右されない伝統的・本質的なスタイルを求める声も高まりつつあります。そしてその答えのひとつが、イギリススーツです。しかし、「イギリススーツに興味はあるけれど、何が特徴で、どう選べばいいのか分からない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、イギリススーツの歴史や特徴、代表的なブランドまで網羅的に解説します。

まずは基礎知識として、イギリススーツの歴史や、イタリア・アメリカのスーツとの違いについて確認していきましょう。
イギリススーツを深く理解するためには、その歴史的背景を知ることが大切です。
現代のスーツの原型は、18世紀ごろにイギリスの貴族が好んで着用していたフロックコートだと言われています。このフロックコートの裾をカットしたラウンジスーツが18世紀の中頃に誕生し、19世紀に入ると既製服として普及。ロンドン中心部にある「テーラーの聖地」とも呼ばれる通り、サヴィル・ロウ(Savile Row)を中心に、顧客一人ひとりのために仕立てる「ビスポーク」という文化が花開き、現在のスーツスタイルの礎を築きました。
また、イギリスにおけるスーツは、誠実さ、実直さ、そして内に秘めたエレガンスといった「英国紳士」の価値観を体現する道具としても捉えられています。過度な装飾を排し、質実剛健で控えめな美しさを追求するスタイルは、こうした精神性から生まれたものなのです。
イギリスのスーツの特徴は、他の国のスタイルと比較することでより明確になります。
とくにイギリス以外で代表的なイタリアやアメリカのスーツとは、シルエットや哲学において違いが見られます。
・威厳と重厚感のイギリス:「ブリティッシュスタイル」と呼ばれ、厚い肩パッドや絞られたウエストなど、構築的で立体的なシルエットが特徴。主なディティールとしては、3つボタンやサイドベンツ、チェンジポケットなどが挙げられます。
・軽快・艶やかなイタリア:「クラシコイタリア」と呼ばれ、薄い肩パッドに代表される、身体にフィットする曲線的なシルエットが特徴。主なディティールとしては、2つボタン、センターベント、マニカカミーチャなどが挙げられます。印象としては、
・機能的・合理的なアメリカ:「アメリカントラッド」と呼ばれ、直線的でゆったりとしたボックスシルエットが特徴。主なディティールとしては、3つボタン段返り、センターベント、フックベントなどが挙げられます。
このように、イギリススーツは他国のスタイルに比べ、よりフォーマルで構築的な美しさを特徴としています。
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ブリティッシュスタイルを形成する、イギリススーツの象徴的な7つのディテールを解説します。これらの要素が組み合わさることで、独特の重厚感と品格が生まれるのです。
硬めの芯地と厚いパッドを使い、肩先が少し盛り上がったようなビルドアップショルダーが特徴。肩から腕にかけてのラインを強調し、男性らしい威厳とたくましさを演出します。
高く設定されたウエスト位置から裾にかけて絞り込む「ウエストシェイプ」が、身体のラインを美しく見せます。これにより、逆三角形の引き締まった上半身のシルエットが完成します。
英国の気候に合わせて発展した、厚手でハリのある生地が主流です。ツイードやフランネルに代表されるこれらの生地は、耐久性が高く、スーツの立体的なシルエットを長期間キープする役割も果たします。
ジャケットの裾の切れ込み(ベント)が、両サイドに2本入るサイドベンツが基本です。これは、英国紳士の嗜みであった乗馬の際に、裾がもたつかないように考案されたデザインの名残と言われています。
右側の腰ポケットの上にもう一つ小さなポケットが付いたデザイン。元々は小銭(チェンジ)やチケットを入れるためのものでしたが、今ではブリティッシュスタイルを象徴する装飾的なディテールとして定着しています。
ジャケットのフロントボタンが3つ並ぶデザインが伝統的です。とくに、一番上のボタンが襟の裏に隠れる「3つボタン段返り」は、Vゾーンに立体感を与え、よりクラシックで洗練された印象になります。
前述のショルダーラインと関連し、胸部分にも増芯(ましん)と呼ばれる芯地を入れることで、ボリューム感のある力強い胸板を演出します。これを「ドレープ」と呼び、英国スーツの立体美の根幹をなす要素です。
次は、サヴィル・ロウの名門ブランドやモダンブリティッシュスタイルの人気ブランド、英国生地ブランドを紹介します。
以下は、イギリススーツの代表格とも言える、サヴィル・ロウの名門ブランドです。
・Gieves & Hawkes(ギーブス&ホークス):サヴィル・ロウNo.1に店舗を構える老舗。英国王室御用達(ロイヤル・ワラント)を3つすべて保持する格式高いブランドです。
・Huntsman(ハンツマン):力強く構築的なカッティングが特徴。映画『キングスマン』の舞台としても有名です。
・Henry Poole(ヘンリー・プール):サヴィル・ロウの創始者とも言われるビスポークテーラーの最高峰。
以下は、伝統的な英国スタイルに現代的な解釈を加えた人気ブランドです。
・Hackett London(ハケット ロンドン):伝統的な英国スタイルをベースに、現代的な感覚を取り入れたコレクションが人気。
・Paul Smith(ポール・スミス):「ひねりのあるクラシック」をコンセプトに、遊び心のあるデザインが特徴。
・Dunhill(ダンヒル):英国のモダンスタイルを牽引する、ラグジュアリーブランド。
以下は、ブリティッシュスタイルのスーツにも用いられることが多い、代表的な生地ブランドです。
・Holland & Sherry(ホーランド&シェリー):豊富なコレクションと高い品質で、世界中のテーラーから信頼されています。
・SCABAL(スキャバル):高品質な生地を供給し続ける、マーチャントの最高峰のひとつ。
・Dormeuil(ドーメル):フランスのブランドですが、英国製生地を多く扱い、世界的に高い評価を得ています。
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今回は、イギリススーツの歴史や特徴、代表的なブランドをご紹介しました。
スーツ・紳士服のはるやまでは、ブリティッシュスタイルをはじめ、さまざまなスーツを取り扱っています。スーツをお求めの方は、ぜひはるやま公式オンラインストアをチェックしてみてください。
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1974年の設立以来培ってきた圧倒的な流通経路を駆使し、大量仕入れや国内外の生地メーカー様との共同開発などで素材の低コスト化に成功しました。
また実用的な機能性を生み出す仕立て、ディテールにまで気を配ったデザインを徹底的に追求し、高品質・低価格を実現しています
お客様に安心してお買い物していただくために、厳しい品質検査基準を設定しています。
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